1月2日
入社以来7年。はじめて「有給休暇」で「本当の休暇」をいただいた。
1月の2日から8日まで。ずいぶん長い休暇である。
年末は12月20日から31日まで無休で働く。年始の業務を元日だけで完了する。
2日から8日まで与えられた7日間。贅沢なことだ。
さて、下準備とはいっても航空券とパスポートくらいか。あとは年末業務の忙しさに何もナシ。
ただミラノの地図くらいはないとお目当ての中央市場にはたどり着けないだろうから、事前に紀ノ国屋書店でイタリア語表記の奴を買っておいた。1500円。地図っていつも思うのだが、現地語で表記していない地図はその地で途方にくれたとき、なんの役にも立たない。書店で売っている日本語の地図には街の看板や通りの名前はカタカナでは書いてあるが、実際の街はカタカナなんぞ書いちゃあいないからだ。
当日。魂の故郷、高尾始発となった「成田エキスプレス3号」に立川から乗りこんだ。時間は朝6時。
新宿を過ぎてから「あっ」と声が出た。なんと列車はそのまま原宿方向へと進み、渋谷に向かっていた。知らんかった!
恵比寿・大崎・品川と山手線をぐるっと半周し、東京で大勢のニンゲンを乗せた後はそのまま何もなかったかのように総武線に合流して成田にごとごとと向かっていった。
成田空港。列車の盛況ぶりとは正反対に、まだ人影もまばらであった。
チェックインをすませ、フライトまで1時間半余ったので展望広場に行ってヒコーキを眺めながら息子と軽くボールを蹴った。寒いけど軽く汗をかいたようだ。
出発だ。お出迎えは8人のイタリア人クルーと2人のニホンジンクルー。このイタリア人どもが何かをしでかしてくれることをちょこっと期待しながら、お席についた。
程なくヒコーキは日本海をぶちぬいていった。
「ちぃー?」「ちぃー?」「こふえ?」「こふえ?」
とにかく愛想よくそこらじゅうのカップにドバドバとポットから注ぎ回るイタリア人クルー。うるさくも面白い。
みんなおとなしくドバドバつがれた紅茶やらインスタントコーヒーやらをがぶがぶ飲んでる。
それにしても機内食。食費が浮くので重宝するが、回りのねぇちゃんどもがほとんど手をつけないで残しているのにはちょっとフンガイした。なんともったいねぇ!
給食食えないオンナの子のメンドーをしっかり見てやってる親子2代のいやしい気質がうずうずする。困ったもんだ。
バイカル湖をかすめたあたりから急に眠くなる。予定通りだ。高度15000mでのウンコをすませた後、われわれ親子はカラダを「く」の字にして深い眠りに・・・・。
目がさめる。海の上?
モニターではなんとバルト海の上だ。へぇ〜!
「ニールスの不思議な旅」に出てくるゴトランド島と、巨大な蝶がそこで息絶えてそのまま島になったというエーランド島を順番に通過していく。息子はイヌのようにすーすーと寝てやがる。
ドイツに入り、急にぶあつい雲が眼下に広がる。ヨーロッパは天気が悪いとはきいていたが、これではミラノは雪か?と少々不安になる。
アルプスにさしかかると、息子が起きた。
「ぎゃ!うえ!すげ!」とかわめいている。
雲を突き抜けて雪山のトンガリがいくつもいくつも出現する。たしかに「すげ!」だ。
「ハーイジー」なんて言ってみたが、息子は無反応だった。さみしいな、おい!
着陸だ。どうやら雨だ。
マルペンサって実は初めてなんだが、意外とこじんまりとしていて驚いた。そのくせ人もあまりいない。
羽田よりもらくちんに出ることができた。
街へ行くために、マルペンサ・エクスプレスに乗りこむ。車両には誰もいない。外は夕闇が一気に広がっていった。
何のまえぶれもなく列車はするっと走り出した。
「あまり日本と風景がかわらないよ」と息子が言う。まだまだ、これからだぜ息子よ。
まぁ、息子の言うように八王子みたいな風景がしばらくは続いていた。郊外はどこもおんなじだ。
カドルナ駅到着。息子はこの時点で相当疲れていた。無理もない。ちょこっと近所をのぞいてメシでも食おうと思ったが、先に宿を決めておいた方がよさそうなのでまず地図を広げた。
東部にどうやらお目当ての卸売市場があるようだった。それならば、と一番近い位置のホテルにあたりをつけて、電話をかける。つながらない。
何度やってもつながらず、あせる。
ふと、まだ暗くなってもやっているインフォメーションに目が行く。トルシエの若い頃のようなツラをした青年がこっちを見る。
「ここ、ここ、連絡つく?」と言うと、「予約した?」と英語で聞いてくる、英語は苦手なので「イタリア語話してよ」っていうとちょっとびっくりしながらもしっかりと応対してくれた。
ホテルの方はどうやらOKらしい。地図に付されていた電話番号がでたらめだったのだ。じゃ、ついでに部屋あいてるか聞いてみてよ、とお願いする。
こちらもOKらしい。助かった。
丁寧に礼をいうと、わざわざ紙に「赤い地下鉄」で、「ドゥオモ」で「降りて」と書いてくれた。さらに考えながら「黄色い地下鉄」で「コルヴェット」で「降りて」と書いてくれた。ありがとう。
地図ではコルヴェットから大通りを北上すれば市場の近くのホテルに着くことになっている。
親子とも疲労でよれよれ状態だったが、行き先がわかれば気持ちは楽だ。
「赤い」のに乗り込む前に地下のBARでカフェとアランチョの赤ジュースを親子ですする。
息子はもうどこでも寝れるくらいへばっていた。
コルヴェットを降りたのち、行きたい方向に93番のバスがきているのでそのまま乗る。息子はキップを買わないのを気にしてたが、大丈夫だ。たぶん。
3つくらいフェルマータを越した。なんかこの辺では?と思い、空いたドアからするっと降りた。
案の定、通りの名前が一致。
3ツ星も誇らしげなホテルにチェックインした。
90エウロ。た、高ぇ!
けど仕方ねぇか、とっととあきらめて会計を済ませ、部屋に入る。
確かに90エウロの価値はあるかもしれん。と部屋に入って思った。少なくとも一泊1万円の都下のビジネスホテルよりはゴーカ設備であった。
ちゃんとしたシャワーで足を洗って、息子とまた深い眠りについた。
(2004/1/2)